親を思い、弟を思い、自分を取り巻くまわりの人々に感謝し、
威張ることをせず、自慢じみた言葉も全くない心からの声。
自らの意思をしっかり持ち、決して揺るがず、その道を信じて歩む姿を目の当たりにし、
ぼくは圧倒されるような力強さを感じた。
原発からほど近い実家では、ご先祖代々からの農家という命を捨て、
すべてを変えなければならない事態に直面したんだそうだ。
「でもね、原発サマサマなところもあるんですよ、、、」
彼の仕事は途切れることなく、どこに行っても引っ張りだこの人気者のようだと。
80歳を超えた長老方々も除染の仕事に行って、その歳ではもらえないような賃金を得る。
仮設住宅や、仕事の斡旋、。。。
「変わっちゃいました。。。」
あの震災が起きる前と、ぜんぜん変わってしまった彼の地元は、
人々もまったく変わってしまったそう。
日本全国から来る労働者たちへ、仕事を斡旋し急に金持ちになってしまった人、
ここに来れば今までもらっていた賃金より多く稼げるし、仮設住宅もあるから、全く困らないといって、そん
な人たちは夜な夜な飲みに行っては、そこら中で喧嘩が始まることもあるらしい。
彼にしかできない仕事、
ぼくはそれを求めて、彼を呼びたかった。
でも本当は、
ちょっと仕事で考えるべくことがたくさんあり
それを彼に戻してもらいたかったのかもしれない。
鼻の奥をツッと刺す冷たい福島の風。
その空気を思いっきり吸いこみ、
目を閉じて口を尖らせ、息を細くゆっくりゆっくり吹き続けた。