長年ぼくと同じ時間を過ごしてくれた大工の平山さんがこの度お仕事をあがられる。
長であるぼくも51になったとはいえ、まだまだ未熟なぼくらを残して大物の先輩があがられることに不安と寂しさが入り混じる。
今日は今までの感謝を綴りたい。
三月のある日、奥さまが倒れられた。
ぼくがそれを知ったのは、すでに気候が変わり春の香りが落ち着きだした頃だった。
ぼくらの心配をよそに、彼の仕事ぶりはいつもと何変わらず、
しかしその変わらない姿がぼくに少しだけ心配を呼んだ。
少しだけ時は過ぎ、
入院されていた奥さまの退院が決まったことはとても嬉しいニュースだった。
それに伴い、これからは家での生活の中でリハビリを続けられることになる、とスタッフから告げられた。
彼は自分の仕事より、いや、自分の生き様を変えて、家族との時間を選んだ。
「これからは、かみさんと一緒に居てリハビリをしようと思います。」
ぼくは流石だと思った。当たり前のことなのかもしれないが、流石だと思った。
大工仕事が大好きだった彼の腕は言うまでもなく、
その功績はうちの20代、30代のスタッフにも多大な影響を与えた。
ぼくは平山さんのこの卒業をどのように考えようか。
頭をひねることなく、その答えは一瞬で現れた。
「娘さんを呼んで、うちのスタッフ全員でパーティーしよう!
で、せっかくやるなら、スタッフの家族もいっぱい呼んで、皆でこの門出を祝おう!」と。
ぼくは、彼の二人のお嬢さんに、お父さんの仕事姿を見てもらいたい、そしてエムズデザインでの功績と、こんなに素敵なスタッフと一緒に仕事をしていたんだ、という二度と見られない格好いい父親の姿を目に焼き付けてほしい、と思った。
それこそが、ぼくらの提言している「’ohana の心得」だ、とも思った。
お嬢さんを連れてきた彼は、今まで見たことのない父の威厳が漂うながらも優しさ溢れる父親の姿だった。
オハナにちなんで「ハワイ風」なパーティーということで、彼とお嬢さんにお花の首飾りをかけてあげたら、今まで見たことのない、ちょっと面白い光景だった。皆で笑った。
スタッフ一人一人からの贈る言葉のメッセージに、何故かぼくが心打たれ、もちろんそれを聞いてる平山さんの顔もとても温かかった。
仕事中には見られないその温かな笑顔は、ぼくらも自然に笑顔にしてくれた。
感動の時間だった。
時間が経つのは早く、楽しい宴はすぐに終わってしまう。
一通り、飲んで、食べて、笑ったあと、
最後に平山さんがお言葉をくださった。
ポケットの中でちょっとくしゃくしゃになった紙に書かれたぼくらへのお言葉はとても重かった。
しかしその温かなメッセージは、確実にスタッフ皆を勇気づけた。
そして、
オハナの扉を出て行く後ろ姿に皆で感謝の拍手、
一つの歴史が終わった。
今日ここまで、
ぼくというパートナーを選んでくださってありがとうございました。
これからは奥様との時間を楽しくゆっくり元気に過ごしてください。
感謝。
追伸
この日の準備をするために、我がスタッフのチカラは偉大だった。
めちゃくちゃ美味しい料理を、素晴らしい現場の記録、思い出のmovieを、手分けしての設営の準備を、みんなありがとう。
皆のすべての思いは必ず実る。
素晴らしいよ。
ありがとうね。LOVE