ヴィンテージマンションという言葉をよく耳にするが、単なる古いマンションがヴィンテージという話ではない。
我らがエムズデザインの原宿オフィス<エムズデザインR&D表参道設計室>が入っているマンションは、このヴィンテージに当たるのだ。
都内や近郊からのお客さまが増え続けているのをきっかけに、数年前、アクセスがしやすい場所にオフィスを構えることになった。
そのときぼくの頭の中にはすぐに『明治神宮のそばだな』と浮かんだのだが、理由は、若いころ、音楽におぼれていたのも、この近くだったし、建築の学びを得たのも、この近く。
そして何より、寺院育ちのぼくは明治神宮のお膝元が良いと思った。
原宿にはいくつかのヴィンテージマンションがあって、ぼくは20代のころから、その佇まいが何となくカッコイイなーと思っていた。コープオリンピアなんて今のほうがいい感じかもね。
先に言っておくけどぼくは、ヴィンテージマニアとかでは全くないし、ある意味、逆に最新のモノへの興味は津々。
なので、古いモノの良いところと新しいモノのイイトコドリをすべきだと思っている。
海外では古くからある建物を外部メンテナンスを重ねて当時の美的外観を維持しながら、室内を最新のデザインかつ高機能にして住むことが多い。
中世から残る建築物の美しさにはサスガに及ばないが、国内でもファサードや外観を考えた設計をおこなっただろう物件はカナリ魅力的だ。
だから近年多くの方が選ばれる、長年住んできたマンションをリノベーションして使うことや、中古マンションを買ってリノベーションして住む、という選択はとても賢いと思う。
ぼくらは何十年も前からこのようなマンションをとても多く手がけているが、確かに古いからこその制約はあるけど、そこを超えるほどの設計やデザインができるのも事実。
新築マンションを超えるほどの高性能に設計することや、外装費用がかからない分、内部の仕上げグレードをかなり上げることもできる。
実際、そのマンションの耐震性能が担保できていれば、天井高が低かろうが、大きな梁が在ろうがぼくはお薦めすることが多い。
そのときに立地やまわりの環境、敷地の広さなども見てあげたい。美しさを感じられるマンションは結構あるしね。
つい先日、事務所のすぐ近く、原宿駅前の原宿アパートメンツと第一マンションズが取り壊された。
アパートメンツは昭和33年築だったらしい。
表参道ヒルズには、大正15年築の同潤会アパートメントの名残がある。
そして今、原宿駅も大変貌を遂げようとしている。
新しくなるのは素晴らしい、
でもなんとなく、、、
若造だったぼくを、ここまで大人にしてくれた場所。
ぼくはできる限りこの美しいヴィンテージマンションと一緒に過ごす。
数年前は、春になると窓から満開の桜の木々が見られた。
そのあと桜は抜かれて駐車場になったが、今、今度は建物が建つらしい。
ぼくは移り変わるこのオフィスの窓から見える景色を、ずっと変わらぬ思いでこれからも眺めていく。