建築工事が終わるとお便りやご感想文を頂戴する。
もちろんぼくたちの方から「お便りください」とお願いするのがほとんどだが、終わりを待ち構えるようにお客さま自らが筆をとってくださることも多々。
それはきっと、ご自身が家づくりという大舞台を終え、プロローグから長い期間をご一緒させて頂いた暁に記しとしてくれるのだろうと、とてもありがたく。
このご感想文を私たちは「お客さまの声」と名付け、そのお客さまとの思い出として笑顔になったり反省をしたり、ときには元気をもらい励まされたりするものとして大切にしている。
むかーし昔、あるお客さまとの会話で、
「あの、お客さまが書いた感想文はホンモノなのか、」という問いを頂いたことがある。
そのときぼくは正直、
『あれを疑う人っているんだ…』と思った。
でもすぐに、
『あれだけぼくら親しみを込めて書いてくださっているんだから、そりゃそうだよな、』とも思った。
そんな出来事の後、今まで頂いたお客さまの声をすべて革製のバインダーに大切に綴じて保管をし、
それから間もなく完成写真とともにHPに記載し、ぼくらを知って頂くためのツールとしての活用をするようになった。
そうすると今度はほかのお客さまから、
「載ってる感想文はほとんど読みました。とても参考になりました!ほとんどの方が読んでるんじゃないかな?」という言葉をもらった。
そして、
「こんなにいい感想文があるんだから、もっとアピールしたほうがいいよ!」とも言われた。
嬉しかった。これは自慢だよなと思った。
ぼくは時折このバインダーをめくることがある。
すると、あの時のお客さまの笑顔、その情景、その時間が思い出され目に浮かぶ。
日付をみれば20年前のものから、こだわって設計した部分、職人との会話、そしてご家族の笑顔が昨日のことのように思い出される。
今はそのお客さまの声は数かぞえ切れないほどになり、革製のバインダーじゃなくなっちゃったけど何冊もの宝物になり、
よく笑い話で、
「大地震が起きたらぼくはこのバインダーを全部持って逃げる!」というくらい大切なものになった。
ぼくは若き日に、人として、建築のプロとして、一生涯をこの道に捧げることとした。
その時まで全く見ず知らずの人を、この出逢いによって<家族=オハナ>として向かい入れ、
一生お付き合いさせて頂くと決めた人生の証がここにある。
正直、信頼、約束、
ぼくたちの証こそが、ここには詰まっている。