都立高校生の社会的、職業的自立支援教育プログラム事業

*このblog記事は<エムズデザインニュースレター2023年 冬至号 Vol.46>に掲載したものです。
 
 
この度、東京都教育委員会の「令和5年度都立高校生の社会的・職業的自立支援教育プログラム事業」で、都立高校の生徒さんに向けて、社会人として講義をさせて頂く機会を得ました。
 
内容は、”建築士”
生徒さんが将来の進路を選んで行くにあたり、いろいろな職業の中から私は建築士の仕事をお伝えするということでした。
本機会をご提供くださいましたご関係者方々に心より感謝申し上げます。
 
 
建築士
 
建築士の業務内容は一言で語ることはできないほど多岐にわたり、すべてを語ることは到底難しいし、まだぼくも知らない業務などもあるのかもしれない。
それゆえに、建築に少し興味が出た生徒さんがネットで調べればすぐ出て来そうな内容ではなく、一般的にはあまり知られていない、かつ文章じゃ伝えづらい、いわゆる生の声でお話しができれば、と考えた。
以前、国立大学の講義では、”建築学科の生徒さんのみ”という、ある意味、将来の道がある程度決まっていた生徒さん達へのお話しだったから、専門的分野を分けてかなり深掘りした所までを語ったが、今回は高校生で、その上、未だ”建築士になる!”と決めたわけではない、言い換えれば、まだご自身の未知すぎる未来を、どのようにして行きたいかがわからない生徒さんがほとんど、という場の中で、建築士という仕事を伝えていくこととなった。
 
それならば、とぼくは、
まず、堅苦しくならず、単なる説明にならず、建築士はいいぞ〜!建築士になれ〜!と押しつけず、この”建築士”というちょっと堅そうな雰囲気をできるだけ柔らかく、今までの経験から具体的に良かったこと&辛かったことと共に、ぼくが得意な”デザイン”の話、そしてこの家づくりの仕事のイメージを、キラリと光る何かと一緒に伝えられたらいいなと思った。
そして、それに併せて、
ぼくが常々生涯をかけて子供や若い人たちにお伝えしていきたいと思っている、
「仕事は楽しい、そして大人になることはとても素晴らしい」ということを織り交ぜながら、物語仕立てにして話すことにした。
 
一ヶ月ほど前、
ぼくはまずシナリオを考えた。(笑 かっこつけてみた)
 
まずは、ぼくが伝えたいことを書き出してみると、大凡、制限時間には収まりきれない長編になってしまったので、それを章立てにして四部構成にしてみた。
単にぶつ切りにしただけでなく、起承転結でもない、物語を小説で読むような感じ…というか、
そうしたら、思ったより良くなって、これで行こう!とすぐに決まった。
 
このプログラムでは様々なご職業の方とご一緒させて頂いたのだが、建築士はぼくのみで、その職業の中から生徒さん自身が興味のある講義に参加するという形式だった。
なので、生徒さんは現段階で既に建築士を目指している人はもちろん、ちょっと興味ある…や、なんとなく見てみるか…、など、その興味度数にはかなり差があると思っていたのだが、こちらに来てくれた生徒さんは皆が大きな興味を示してくれて『今の子ども達はとても素晴らしいな…』(オッサン言葉)と心から感じた。
だからこそお話しも、ちょっとノリ気味で話せたのでぼくとしてもとても楽しい時間が過ごせた。
内容はここに書くと恥ずかしいから、タイトル+ちょっとだけ…
 
1,”建築の面白さは、あなたの面白さ”
 Title  “好奇心を追求しよう”
 
2,”デザインへの旅”
 Title  デザインの魔法を解き放とう”
 
3,”人気もの”
 Title  選ばれるデザイン、選ばれる人に成る”
 
4,命を預かる建築士という仕事”
 Title  ようこそ、未来の建築士さん”
 
 
1,は、建築とは、から始まり、建物や資格の種類、そして職務の種類から、知識や技術を取得すると、どうなるのか?そして自分の良さを発見する方法などを話しました。
2,は、デザインをどう起こしていくのか?や、それをどのように造るのか?という説明、またCADや立体の3D画面をPCを使って動かしたり、製図道具や実際の図面やパースを生徒さんに見てもらいながら具体的にお話しをしました。
3,の、「選ばれるデザイン、選ばれる人」の話では、相手が必要としてくれる人になる、というお話しをしました。
4,では、私の一番好きな、建築士法第一章・第二条の二(職責)、についてのお話を。強調したのはもちろん、常に品位を保持し… という所。
そしてその上で私が思う、建築士として必要なこと、と、人として必要なこと、を二本立てで、お話ししました。
 
 
 
 
ぼくは子供のころ、早く大人になりたかった。
大人になれば今起きてる辛いことが全部無くなると信じていた。
毎日が嫌で嫌で、引き篭もって音楽を友とし、今思えば、世の中に順応しづらい子供だったと思う。
家族はそれを知っていたようにぼくを心の底から愛(め)で、可能性あるものすべてを許してくれた。
しかしある朝おばあちゃんが亡くなった。
そこからはぼくの味方になって支えてくれていたおばあちゃんと一緒に居なくなりたいと思う日々が続いた。
母はその都度ぼくを抱き、本堂で大きく温めた。
見失った自分の欠片を一つ一つ合わせ始められたのは、それからしばらく経ってからだった。
全く未来が見えなかったあの少年時代を経ていつしかぼくは大人になり、未来が透き通って見えるようになったと気付いたある日、目の前の空が遠くまでずっと晴れ渡って見えた。
 
 
 
ぼくがこのblogを始めると決めて最初にタイトルをつけるとき、
生涯に亘って続けていく、ぼくの中での約束のようなものにしたいと思った。
 
 ” Children’s Record “
 子供達に普通のオッサンが残してあげられることはないか…
 少しでも、子ども達の心にレコードされてくれれば…
 
そんな思いから、このタイトルをつけた。
ぼくには今、二人の子供が居る。
もう二人とも大人になってしまったが、それはそれは、一言では言い表すことができないくらい大きな幸せを感じている。
その上で生意気なようだが、我がスタッフの家族、子供たち、そしてオハナであるお客さまの家族、お子様たち、出逢う子みんながぼくの子供のように思えてしまうんだ。
 
 
大人になった今、
あの日のぼくに声をかけるとしたならば、、、
そんな思いで教壇に立ったぼくは、こんな言葉で今回の講義を締めくくった。
 
 
「仕事は楽しいものなんだ! ワクワクして楽しんで欲しい、
 そして何より、大人になることはとても素晴らしい事なんだ!
 ということを感じてほしいと思っています」と。
 
 
林正晃
 
 
 
 
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投稿者: hayashi 日時: パーマリンク

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